おむつなし育児とは?

赤ちゃんも気持ち良く排泄したい。
おむつの外へ排泄する機会をつくる育児方法

「おむつなし育児」と聞くと、「おむつを外して垂れ流しで・・・」と想像されがちですが、実際はそうではありません。「なるべくおむつの外で自然に排泄させる機会をつくる育児」と言う方がより正しいでしょう。「おむつなし育児」は、昔から実践されてきた、赤ちゃんにとって健康的で気持ちのいい排泄ケアです。布おむつ、パンツ、そして、紙おむつを上手に使いながら、なるべくおむつの外で排泄する機会を増やしてあげるのが「おむつなし育児」です。

気持ちの良い排泄をしながら、
親子のコミュニケーションが育つ。

私たちは「赤ちゃんは、おむつの中でおしっこ・うんちするもの」と思いこんできました。でも、そう思い込んでいるのは大人だけで、サポートさえあれば、赤ちゃんでも自然な排泄ができるのです。

おむつなし育児では、普段はおむつをしていても、排泄時にはなるべくおむつの外に、赤ちゃんが気持ち良く排泄できるよう大人がサポートしてあげます。トイレ・トレーニングのように、おまるやトイレでさせることが目的ではなく、おむつを開いてその上でさせてあげるだけでも良いのです。

気持ちの良い排泄ができると、赤ちゃんはとってもご機嫌で、カラダもココロもたくさん良い変化があらわれます。

「赤ちゃんに気持ち良い排泄をさせてあげたいな」と関心を寄せることで、「排泄しそうなタイミング」は、赤ちゃんの仕草や、それを察知する親の観察力・勘などにより、だんだんとわかるようになってきます。

排泄のタイミングがわかってくると、赤ちゃんの他の欲求もよくわかるようになり、赤ちゃんとのコミュニケーションがもっとラクで楽しくなっていきます。それが「おむつなし育児」の最もよろこばしい副産物です。

おむつはトイレではありません。
成長した後のトイレトレーニングもとても楽にすすみます。

赤ちゃんはおむつをつけて生まれてきません。大人の都合でおむつをつけてます。

生まれて間もない赤ちゃんは、おむつを外すと「しゃーっ」とおしっこを飛ばすことがよくありますが、この「何にもジャマされない排泄」が、本来の自然な排泄の姿です。しかし赤ちゃんは、大人の生活に合わせて「おむつをトイレとして使う」ことを学習し、 数年後には「おむつをトイレとして使わない」ことを学習しなおします。だから「トイレ・トレーニング」はとっても大変です。

今もおむつをトイレとして使わない国や地域で育つ赤ちゃんは、1歳後半~2歳頃になると排泄は自然に自立します。津田塾大学の研究チームが2014年に日本で行った調査によると、おむつを使っていても、「おむつをトイレとして使う」ことをなるべく学習しないように育てる(おむつなし育児をする)と、やはり1歳後半~2歳頃には、比較的自然に排泄が自立することが明らかになっています。これが人間の、自然な発達の姿といえましょう。

ところが今、先進国では、長期間にわたっておむつを使用し続けることで、排泄が自立する年齢が、3歳、4歳、5歳・・・と、どんどん遅くなってきています。日本同様に子どもの排泄の自立が遅くなっている欧米では、近年「トイレトレーニングの開始が遅れる(おむつの外での自然な排泄を経験することが遅れる)と、成長してから切迫尿失禁等の排尿コントロールの問題を抱えるリスクが高まる」という論文が複数の泌尿器分野の研究者によって発表され始めています。

おむつなし育児のメリット&デメリット

メリット

赤ちゃん
  • 一度にたくさん排泄できるので、便秘や頻尿の改善のきっかけになる
  • 赤ちゃんのキゲンの良い時間が長くなる
  • おむつかぶれが改善する
  • 排泄コントロール能力が自然に育ち、1歳後半~2歳頃には排泄が自立する事も多い
  • おむつを外す時間が増えて、体の動きが活発になる
  • いかにも気持ち良さそうに眠る
大人
  • 赤ちゃんの排泄のタイミングがなんとなくわかるようになると、育児に自信がつく
  • 排泄に気持ちをむけることをきっかけに、赤ちゃんの他の欲求もわかりやすくなる
  • ウンチをおむつの外(おまるやトイレ等)でしてくれると、お世話が楽になる
  • おむつの使用量が減って、おむつ代が節約できる
  • 紙おむつゴミを減らせるので、「環境」にも優しい

デメリット

  • 短期的にみると、オムツの中で排泄させるよりも手間がかかる
  • 排泄したそうなタイミングがよくわかってくるので、それに振り回されることもある
  • 洗濯物が増えることもある

専門家の意見

日本の社会では「おむつの外で排泄させること=トイレトレーニング」という思い込みがまだ強いため、おむつなし育児を「早期トイレトレーニング」と誤解されている方が少なくありません。

一方、赤ちゃんに深く関わっている保健医療や保育の専門家の中には、下記にご紹介するとおり、乳児期から気持ち良い自然な排泄を経験することの重要性や、おむつなし育児が親子のコミュニケーションをより良くすることを理解される方、あるいは理解して実践される方が少しずつ増えていることも事実です。

中野美和子先生

さいたま市立病院・小児外科部長。長年、排便外来で子どもの便秘治療に携わる
「オムツなし育児について」

オムツなし育児とは、乳児期から排泄をオムツの外で行う、という育児法です。紙オムツが普及する以前の日本では、普通のことでした。また、開発途上国では、多くの子どもがそうしています。赤ちゃんの尿意・便意のサインを読み取って、あるいはタイミング(哺乳後など)で、オムツ以外の場所、オマル・トイレなどで、排泄させます。もちろん、失敗してしまうこともあるでしょうが、徐々にうまくいくようです。日本では、完全にオムツをはずしてしまうということではなくて、可能なときはオマルで排泄させる、ムリな時はオムツに排泄させる、というかたが多く、「オムツいらない育児」ではありません。

オマルやトイレで排泄する体位で、赤ちゃんの身体を支え、股を開かせるほうが排泄しやすい、濡れたオムツに接触しないので気持ち良い、という赤ちゃん側のメリットがあります。また、赤ちゃんの尿意・便意の微妙なサインを察する、排泄の間、親がずっと子どもに寄り添い声をかける、ということから、親子のコミュニケーションがよりいっそう図れ、赤ちゃんの機嫌がよい時間が増えます。紙おむつの使用量が少なくて済むので、環境に優しいという側面もあります。

排泄体位からいうと、乳児期から出しやすい良い体位で排便をするので、便秘になりにくく、便秘症の体質であっても悪化しないという可能性がありますが、これに関しては、まだなんともいえません。排泄が自立する、ないし、オムツが不要になる年齢は早くなると思われますが、これも個人差があります。紙おむつ普及以前の日本では、一歳ごろでオムツがいらなくなることは珍しいことではなく、オムツはせいぜい二歳までだったようです。

『赤ちゃんからはじまる便秘問題』中野美和子著/言叢社(2015年)より引用(p.30-31)

汐見稔幸先生

東京大学名誉教授・白梅学園大学学長。専門は教育学、教育人間学、育児学。著作多数。
「結局、おむつなし育児とは・・・」

育児には次の三つの側面がある:

① 赤ちゃんの育とうという気持ちに依拠したサポート
② 本当は赤ちゃんがしたいのに親がやってしまうお節介
③ 親の都合に赤ちゃんを合わせさせている行為
今はこれが「①<②、③」になっているのではないか。これを、「①>②、③」にするのがおむつなし育児だと思う。今まであまり考えないで「便利だ、快適だ」と求めてきた近代社会の創り方を根底から考えなおすには、人間の自然性に着目しするしかない。そういう意味で、おむつなし育児は、赤ちゃんの内的自然=human nature に沿って、上手な形で実践して具体化していると思う。是非、これからも応援したいし、同時に各保育園でもチャレンジしてほしいと願う。

『保育通信 6月号』公益社団法人 全国私立保育園連盟(2015 年) より引用(p.18-19)
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